選挙にユニバーサルデザインが必要な理由
情報は目から入るものが多い
人間は情報の80%以上を視覚から得ていると言われています。「見てわかる」「読んでわかる」ことが、情報伝達の上で非常に重要です。
読みにくさ、見にくさを感じる人
しかし、世の中には文字の読みにくさを感じている人がいることをご存知でしょうか?
色覚障がいや読字障がい、目の疾患や加齢による機能の衰えなどがある人たちです。点字や介助を必ずしも要していなくても、日常生活の中で困難を感じている人は案外多いのです。
例えば、特定の色の判別が難しい色覚障がいは男性の約20人に1人、女性は約500人に1人の割合だと言われています。学校のクラスの中にだいたい1名は存在する割合ですね。
また「かすんで見える」「黄色っぽく見える」などの症状が出る白内障は高齢者に多く現れますが、選挙の年代別投票率を見ると、高齢者は決して無視できない層です。
選挙の広報物は公共の広報物
選挙デザイン研究所では選挙ポスターは公共の掲示物であると考えています。視覚に特性を持っているがために情報が得られにくいとなると、選挙に参加するにあたり不利が生じてしまいます。投票率の低下が問題になっている現在、少しでも多くの人に選挙に参加してもらいやすくする動きも必要ではないでしょうか?
読みにくいビラはただの紙切れ
実際にあったお話をします。
私の家族は色覚障がいを持っています。ある日、私が持っていた選挙ビラを見せたところ「文字がとても読みにくくて、到底読む気が起こらない。」と赤っぽい写真の上に黒い文字が載せられていた部分を指して言いました。一般色覚者の私は普通に読むことができ、デザインとしては凝っているし、ぱっと見は素敵に見えたものです。しかし、そのデザインの色の組み合わせは、色覚障がいの人にとって見えづらい色の組み合わせだったのです。
家族の一言で気付きました。良いことを書いてあったとしても、デザインがおしゃれであったとしても、見づらければ選挙のビラとしては何の意味も無いと。そして、選挙のデザインにもユニバーサルデザインが必要だと強く感じました。
私はかつて企業のCSR報告書の制作に携わっていたことがあり、ユニバーサルデザインというものの存在やある程度デザインの仕方も心得てはいました。しかし、ユニバーサルデザインと選挙を結びつけることはそれまでできていませんでした。この出来事をきっかけとして、ユニバーサルデザインについて真剣に学び、実践するようになりました。
選挙ビラは読まれてなんぼです。ポスターは見てもらってなんぼです。見る気も起こらないようなものを作っても、それはただのお金の無駄遣いです。